オンライン授業のデザイン

大学で日本語教育(教員養成科目,日本語科目)を担当しています。2020年春,突然取り組むことになったオンライン授業のオモテとウラを本音で記録しています。

学習者の日本語レベル

「「わたしのにほんご」プロジェクト1−2」の末尾にある数字は,対象とする日本語レベルを表しています。

センターの日本語科目には,1〜8の8つのレベルが設定されています。数字が大きくなればなるほどレベルが上がります。「1−2」というのは,もっとも下の2つのレベルを対象にしていることです。これを丸めて「初級対象」と言ってしまえばそうなのですが,実態としては「まったく日本語を知らない,いわゆるゼロ初級の1レベル学生」から「3レベル寸前の2レベル学生」までが対象となります。

センターでは学期当初にレベルチェックテスト(文法項目が主。受容のみで産出は見ていない)を行っているので,学生は自分の日本語レベルを知っています。しかし,そのレベル以外の科目を履修することを妨げてはいません。これはたとえば「レベルチェックテストでは5レベルだったが,漢字は苦手なので3レベルの科目をとろう」とか「レベルチェックテストでは2レベルだったが,会話は得意だし挑戦したいので4レベルにしよう」といったように,学習者の多様性を吸収するとともに,個々の学習者の自主的選択を尊重しようというセンターの教育理念によるものです。

この教育理念そのものにはまったく賛成なのですが,その結果として,私の授業についていえば,次のようなことが起こります。

  • ゼロ初級の学生が,シラバスに共感して履修する。
  • 教科書で初級を終えた3レベルの学生が,「教科書にない日本語を学びたい」と考え履修する。
  • 5レベルの学生が,「楽してAの成績がほしい」と考え履修する。

つまり,いわゆる「レベル差」を遙かにこえた学習者たちが混在しているクラスになるのです。

ここから先,議論が錯綜しないように,「日本語科目の履修生」を「学習者」,「教育実習科目」を「院生」と便宜的に書き分けます。