オンライン授業のデザイン

大学で日本語教育(教員養成科目,日本語科目)を担当しています。2020年春,突然取り組むことになったオンライン授業のオモテとウラを本音で記録しています。

オンライン化の課題:日本語科目

2つ前の記事に書いたように,日本語科目には次のような学習者が混在しています。

  • ゼロ初級の学生が,シラバスに共感して履修する。
  • 教科書で初級を終えた3レベルの学生が,「教科書にない日本語を学びたい」と考え履修する。
  • 5レベルの学生が,「楽してAの成績がほしい」と考え履修する。

いわゆる「レベル差があるクラス」なわけです。これまでの授業ではクラス全体に対してやや幅を持たせたテーマを提示し,「何を学ぶか」は教室活動のなかで個別に対応することでレベル差を吸収していました。

たとえば次のような具合です。

クラス全体には「買い物をする」というテーマを提示する。学習者は,それぞれ「自分がしたい買い物」「日本語で首尾良く買い物ができなかった経験」を考え,「自分の買い物の状況」を設定する。ゼロ初級の学習者であれば「コンビニでお弁当を買ったら「お箸つけますか」と聞かれたので,「要らない」と返事をしたい」といった状況が出てくるので,「あっ,いいです」「だいじょぶです」「いえ(と言いながら首を横に振る)」等を学ぶ。もうちょっとできる学習者であれば「靴店で気に入ったスニーカーがあったが,自分のサイズがなかったので,他店舗から取り寄せてもらえるかどうか尋ねる」といった状況が出てくる。

ゼロ初級の学習者から「他店舗から取り寄せてもらえるかどうか尋ねる」といった状況が出てくることもありますが,「これを言いたい」「私にはこういう表現が必要」という気持ちは,なにより強力なモチベーションになります。なので,教師側が「その状況はあなたには難しすぎる」といった誘導はしません。また「やや不自然だけど,初級レベルの文型と語彙の表現を教えよう」ということもしません。学習の上限を決める権利は,教師にはないと思うからです。

平時には,教室に生身の私と院生が,多い学期には10名近くいたので,このような丁寧な個別対応が可能でした。しかし,オンラインの授業でどこまできめ細やかな個別対応ができるのか。これが日本語科目が抱えている課題です。