オンライン授業のデザイン

大学で日本語教育(教員養成科目,日本語科目)を担当しています。2020年春,突然取り組むことになったオンライン授業のオモテとウラを本音で記録しています。

日本語科目について

日本語センターで担当しているのは,「「わたしのにほんご」プロジェクト1−2」という授業で,概要は次の通りです。

「教科書の日本語は、みんなが使っている日本語とちがう」「教科書には、私が使いたい場面がない」と思ったことはありませんか。「わたしのにほんご」プロジェクトは、「日本語で話したいこと/書きたいこと」「日本語がうまく使えなかった経験」を持ち寄り、「わたしのにほんご」をたくさん増やしていく授業です。[シラバスより]

このような授業を立ちあげた背景にある問題意識は,次の2つです。

  1. これまでの日本語教育は,すべて「言語を状況から切り離して教える」アプローチをとっていた。
  2. これからの日本語教育は,「言語を状況から切り離さないで教える」「状況のなかで言語とコミュニケーションをとらえる」アプローチをとるべきである。  

このことについてまとめた関連文献は,次の通りです。

非常に大ざっぱに言ってしまうと,1980年代にコミュニカティブ・アプローチが台頭し,言語(日本語)教育はコミュニケーションを目指すようになったけれど,とくに初級レベルにおいては,言語形式が中心であるところは変わらない。たとえば,マセンカを「否定疑問文」ではなく「勧誘の表現」に置き換えるなど。このように,根本にある文型はそのままで,ラベルを付け替えただけである…といった問題意識です。

朝起きて「今日,ケイちゃんに会ったら,お土産のお礼を言おう」と思うことはあっても,「今日,ケイちゃんに会ったら,イ形容詞を使う」と思うことはありません。であれば,日本語授業のデザインも,「イ形容詞を使う」から出発するのではなく「お土産のお礼を言う」から出発するべきではないかと考えました。

f:id:minakob_lab:20200427144018p:plain私の名前で提供している科目ではありますが,初回「ガイダンス」と2回目「自己紹介」以外は,実習生(大学院生)が授業デザインから成績評価まで,すべてを主体的に行います。もちろん私も,デザインから振り返りまでしっかりつきあいますが,あくまで後方支援です。