日本語科目について
日本語センターで担当しているのは,「「わたしのにほんご」プロジェクト1−2」という授業で,概要は次の通りです。
「教科書の日本語は、みんなが使っている日本語とちがう」「教科書には、私が使いたい場面がない」と思ったことはありませんか。「わたしのにほんご」プロジェクトは、「日本語で話したいこと/書きたいこと」「日本語がうまく使えなかった経験」を持ち寄り、「わたしのにほんご」をたくさん増やしていく授業です。[シラバスより]
このような授業を立ちあげた背景にある問題意識は,次の2つです。
- これまでの日本語教育は,すべて「言語を状況から切り離して教える」アプローチをとっていた。
- これからの日本語教育は,「言語を状況から切り離さないで教える」「状況のなかで言語とコミュニケーションをとらえる」アプローチをとるべきである。
このことについてまとめた関連文献は,次の通りです。
- 小林ミナ(2017)「「状況から出発する」アプローチ」『早稲田日本語教育学』22,101-113.http://hdl.handle.net/2065/00054105
非常に大ざっぱに言ってしまうと,1980年代にコミュニカティブ・アプローチが台頭し,言語(日本語)教育はコミュニケーションを目指すようになったけれど,とくに初級レベルにおいては,言語形式が中心であるところは変わらない。たとえば,マセンカを「否定疑問文」ではなく「勧誘の表現」に置き換えるなど。このように,根本にある文型はそのままで,ラベルを付け替えただけである…といった問題意識です。
朝起きて「今日,ケイちゃんに会ったら,お土産のお礼を言おう」と思うことはあっても,「今日,ケイちゃんに会ったら,イ形容詞を使う」と思うことはありません。であれば,日本語授業のデザインも,「イ形容詞を使う」から出発するのではなく「お土産のお礼を言う」から出発するべきではないかと考えました。
私の名前で提供している科目ではありますが,初回「ガイダンス」と2回目「自己紹介」以外は,実習生(大学院生)が授業デザインから成績評価まで,すべてを主体的に行います。もちろん私も,デザインから振り返りまでしっかりつきあいますが,あくまで後方支援です。